建設業で労災保険の手続きはどうすればいいの?制度の概要は?

特別加入・社会保険


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建設業では、建設工事毎で労災保険に加入します。そのため、保険契約の手続きなどが、一般の労災保険と異なります。本記事では建設業における労災保険の手続き、建設業の労災保険で重要な有期事業に関してご説明します。

工事開始から10日以内に保険関係成立届を提出する

建設工事の場合、その工事を受注した元請会社が、工事開始から10日以内に保険関係成立届を労働基準監督署又は労働局へ提出します。保険関係成立届へは事業の種類、事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、事業所電話番号、雇用保険被保険者数などを記載します。

なお、この成立届が提出されていない場合でも、工事が始まった時点で自動的に労災保険への加入が成立したことになります。そのため、加入手続きを済ませていない間に労災事故が発生した場合でも、労災補償は受けることができます。

ただし、元請会社に対しては、本来労災保険に加入していなければならないところを加入していなかったため、「労災保険の費用徴収制度」が適用されます。支給した労災保険給付額の全部または一部が徴収されることになります。例えば、以下の通り状況に応じて、支払いが必要となります。
    
● 加入手続きについて行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、
事業主がこれを行わない期間中に労災事故が発生した場合
・・・保険給付額(治療費等)の100%徴収

   
● 加入手続きについて行政機関からの指導等を受けていないが、事業主が工事開始日から1年を
経過してなお加入手続きを行わない期間中に労災事故が発生した場合
・・・保険給付額(治療費等)の100%徴収

労災保険関係成立票を見えるところに掲示

保険関係成立届を提出したら、労災保険関係成立票を見えるところに掲示します。
これは、徴収法施行規則第77条で定められています。掲示すべき内容は以下の通りです。
● 保険関係成立年月日
● 労働保険番号
● 事業の期間
● 事業主の住所、氏名
● 注文者の氏名
● 事業主代理人の氏名

継続事業と有期事業とは

労災保険において継続事業とは、事業終了の時期が予定されていないものをいい、有期事業とは終了が予定されているものをいいます。

一般の事業は、廃業や倒産しない限り事業は継続しますので、継続事業に該当します。
その一方で建設業は、各工事現場における工期があるため終了の時期が予定されておりますので、有期事業に該当します。

有期事業は、労災保険の加入の手続きが継続事業と異なり、原則、工事現場の所在地を管轄する労働基準監督署で手続きを行います。継続事業では、その事業所の所在地を管轄する労働基準監督署となります。

また、有期事業には単独有期事業一括有期事業があります。一括有期事業とは、有期事業のうち労災保険料の概算見込額が160万円(または確定保険料100万円)未満で、かつ、請負金額1億9千万円未満のものをいいます。この場合、下記の要件を満たせば、それらの工事を取りまとめて一つの保険関係で処理することができます。

① それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体もしくはその準備の事業であること
② それぞれの事業が、事業の種類を同じくすること
③ それぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一の事務所で取り扱われること
④ 厚生労働大臣が指定する種類の事業以外の事業にあっては、それぞれの事業が③の事務所の所在地を管轄する都道府県労働局の管轄区域またはこれと隣接する都道府県労働局の管轄区域(厚生労働大臣が指定する都道府県労働局の管轄区域を含む)内で行われること

一括有期事業に該当しない有期事業は、単独有期事業となります。工事現場ごとに所在地を管轄する労働基準監督署において保険関係を成立させ、工事終了の都度、保険料の精算が必要です。

一括有期事業の場合、毎年7月10日までに概算・確定保険料申告書、一括有期事業報告書、一括有期事業総括表を提出し、保険料の納付を行います。

建設工事における労災保険料の計算方法とは

一般的な労災保険料は、「事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額に労災保険率を乗じて算定する」ことを原則としています。つまり、その年度に従業員へ支払いされた賃金総額に労災保険率をかけて、労災保険料を計算するのです。
ただし、賃金総額を算出しにくい建設業は労災保険料の計算方法が異なります。徴収法施行規則第12条と13条により、「労務費率(工事の請負金額に占める賃金総額の割合)に請負金額を乗じて得た額を賃金総額とする」となっています。

労働保険料 = 請負金額 × 労務費率 × 労災保険率
一般拠出金 = 請負金額 × 労務費率 × 一般拠出金率

ここまで説明してきた通り、建設業における労災保険は、一般事業とは大きく異なります。非常に複雑ですが、建設業において必須の制度です。自社で対応が難しい場合、社会保険労務士や労働保険事務組合などの専門家に依頼することも検討してはいかがでしょうか。

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